モニターの向こうがわ

Webサービスやアプリを作っている人が見たり考えていることを綴っています

when you gaze into your monitor, the monitor also gaze back into you.

CSPO研修を受けてきた

会社の金でCSPO(Certified Scrum Product Owner)研修を受けてきた。期末の忙しい中、3日間終日不在してしまってほんとに不届きなのだけれど学びが多かった。

実は3年くらい前にも一回受けたことがある

前職でも実は同じ研修を受けたことがある。その時はJeff Patton氏が来てくれてプロダクトディスカバリーなどScrumに入る前段階のプロセスをメインにやった。ただその時はScrum開発がそんなに緊急課題ではなかったし、実際研修後もScrumで何かプロジェクトを推進したわけではない。いってしまえばペーパードライバー状態だった。

翻って現在は、現職の開発部隊が積極的にScrumを導入しようとしているし、UX側としてはそんな彼らにどう相対すればよいのか、本当にScrumってイケてんの?という課題意識もあったので、再度受講してみることにした。今回は日本のOdd-eという会社が主催で、内容もプロダクトディスカバリーというよりはScrum開発を進めるにあたってProduct Ownerがどうすりゃいいのか?がメインだった。

Scrumとは現状把握のためのフレームワークである

これは研修1日目に聞いた内容だったけど、これだけで受講の価値があった。

Scrumというと「短期間でリリースを繰り返す」とか「変化に適応するためのものである」とか、ヘタすると「Scrumで開発生産性上がりました」とか「Scrumで昨対30%アップ!」とか眉唾なフレーズと語られることが多いように思える。実際自分も開発生産性を上げるためのものだと思っていたし。

しかし実際はチームの現状を把握して課題を見えやすくすることまでしかScrumは担保しない。発見された課題をどう処理するのかは人に委ねられる。ましてや開発生産性があがるかどうか、ビジネスにどれだけ寄与したかどうか、などはメンバーがどれだけ努力したかの結果であり、Scrumはそこには貢献しない。

繰り返すが、チームの透明性を上げて現状把握をしやすくするための道具でしかない。

短期間Sprint開発とかSprint PlanningとかStory PointとかRetrospectiveとかProduct OwnerとかScrum Masterとか、Scrumにおける様々なルールはこの目的(現状を把握しやすくする)のために設定されたものである。ここを履き違えてしまっている人もしくは組織が多いのではないだろうか(実際自分も大いに勘違いしていた)

課題を発見しやすくするために、計画をシンプルにする(Definition of DoneやSprint Planning、Product Backlog Itemの粒度)。予実を見える化して振り返しやすくする(Story PointとVelocity、Retrospective)。それを頻繁に行う(短期間Sprint)。

Scrumで決められているルールには必ず背景があり目的がある。それらがうまく関連しあって、Scrumというフレームワークができている。

メンバーを固定化すべし。でもそれができない時はどうすればよいか?

現状を浮き彫りにするために、同じプロセスを短期間で何度も繰り返す。それによって課題は見えてくるとは思うが、そのためにはメンバーを固定してコンテキストを一定にしないといけないとのこと。自分の現状にフィットさせるには、ここが一番ハードル高いと思った。半年で組成から解散するプロジェクトなんでザラだし、人員の入れ替わりも激しい。

しかし裏を返せば、メンバーがどれだけ固定化されているかどうかがScrum導入の判断基準の一つであり、流動的なのであればできるだけ集合知見える化して(例えばドキュメント化するとかして)ウォーターフォールで進めればいいだけのこと。メンバーを入れ替わり可能な歯車として実行へのコミットをしやすくする環境にするのがベター。無理してScrumなんてやることはない。

現場への装着課題

たくさんのことを学んだし、課題認識を持って参加したのでいろいろ持ち帰ることができた。しかしそれでもこのフレームワークをどうやって現場に導入すればよいのか?もっと根本的にScrumにする意味があるのか?の答えは見つかっていない。

既存事業のプロダクトをエンハンスする上でScrumというやり方はメリットあるかもしれないがデメリットもたくさんあるように思える。「チームの現状を把握しやすくする」ための方法って他にもたくさんあるだろうし、Scrumでないと把握できないというわけでもない。

また、これまでWebディレクターだった人にいきなりProduct Ownerさせても重責なだけだし、他に細分化されたポジション(WebアナリストとかIAとかリサーチャーとか)をどうやってフィットさせるかも考えないといけない。

他にもあるかもしれないが、とりあえず。4月から新しいプロジェクトにジョインするのだけれど、そこがScrumを導入しようとしているらしい。そこでまた何か見えてきたら追記したい。