モニターの向こうがわ

Webサービスやアプリを作っている人が見たり考えていることを綴っています

when you gaze into your monitor, the monitor also gaze back into you.

うまくいかないデザインレビューとWebディレクターとしての役割

デザインレビューとは

Webディレクターという仕事の中に「デザインレビュー」という避けては通れないプロセスがあります。クライアントの要件をヒアリングして、コンセプトを決め、そのコンセプトのもとデザイナーにデザインを作ってもらい、そのアウトプットをクライアントにお披露目するレビューです。関係者各位に「今までみんなで話して決めたことってデザインとして表現するとこういうことだよね、OKだよね」という確認の場です。

Webディレクターとしては確認および承認を取りたいだけなので、そのレビューでデザインの細かい部分に関して意見は求めていません。というかそれはデザイナーの仕事であって、ディレクター&デザイナーが裁量と責任を持って遂行しているつもりです。

うまくいかないレビュー

しかしこのレビューにおいて、往々にして、クライアントの方々からとんでもない意見が出てくることがあります。

「この色は好みでない」とか「このアイコンはよくわからない」とか「競合ではこうやってるんだけど・・」とか。

デザインにもロジックがあり、事前に決めたコンセプトと表層デザインをつなぐ道筋をこちらが説明します。ディレクターとしてはこのロジックこそが価値発揮のポイントであり、それが仕事であると同時に、それを関係各位に理解してもらうのもまた大事な仕事です。

そもそも表層のデザインは眼に見えるものです。それまで決めてきた要件やコンセプトは眼に見えないものであり、そのイメージはデザイナーがデザインをおこすまでは具体化される機会はありません。なので、関係各位がそれぞれ抱えていたイメージの差異がレビューの場に集められるのです。

根本的な部分で考えの違いが発見され、それを補正すべしということになれば、そのレビューはまだ有意義だと思います。(そもそもの話が違う、ということになりますので、そのディレクターは解任されるかもしれませんが・・)

しかし、デザインそのそものレビューは、非デザインの方が抱くアイデアは、ほとんど素人考えなので、それに時間を多く割いてしまうのは有効ではありません。

人は眼に見えるものに口を出し、理解できるものに時間を使う

パーキンソンの法則に自転車置き場の理論というものがあります。原子炉のような巨大で複雑な専門家が必要なものについての議論において、一般人は理解を越えていたり誰か別の人が決めてくれるだろうと思い、あまり口を挟まないため着々と進む。しかし自転車置き場のような身近はものは、皆がイメージ付きやすいためトピックが些末な点に陥りやすく、本質的な議論がないまま時間だけが膨大に必要である。

難航するデザインレビューにおいて発生している事象とよく似ているように思えます。

このような事態を避けるため、本来であれば前段である戦略とか要件とか仕様などをじっくり関係各位で議論をして合意を得るべき-- というウォーターフォール的なアプローチと、前段でのプロセスを行いながら同時並行でデザインを作っていく-- アジャイル的なアプローチのどちらかを取ることになります。

流行り、でいうと最近では後者がよく話題に登っているように思えます。ただ私個人的にはまだ圧倒的に前者が現場に適応しやすく、(まぁまぁ)成功することが多いです。チームが大きく、関係者が多いと、すぐアウトプットしてフィードバックもらうまでのリードタイムが長くなってしまうので(下手すると社長にまでデザインを見せないといけないこともある)、どうしても土台をしっかりしてから・・となってしまいます。

眼に見えないものを見えるようにするチカラ

デザイナーやエンジニアの「それまでなかったものを作るチカラ」「見えないものを具現化するチカラ」はかけがいのないスキルです。クライアントはそのチカラを事業推進に使いたいし、Webディレクターはその意図とデザイナー・エンジニアのチカラをうまくブリッジすることに価値を発揮させなければなりません。

そのためには事業・デザイン・エンジニアリングの素地が必要ですし、またどのようにして具現化するかの道筋を整える必要もあります。小さいチームには小さいチームなりの、大きいチームにはそれなりの、最適な方法と場を作ること。関係各位お互いの責任範囲を定義する。などのプロジェクトマネジメントとしての役割も必須です。

 

パーキンソンの法則 (至誠堂選書)

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